平成二十九年第二回定例会 9月議会 一般質問





一 信頼回復につい             [知事]


北林たけまさ


 自由民主党の北林丈正です。今年二月の代表質問に続いて質問の機会をいただいたことを大変光栄に思います。また遠方から傍聴においでいただいた皆様には、深く感謝を申し上げます。 県当局に置かれましては率直かつ前向きな答弁をお願いして質問に入らせていただきます。

まず知事の信頼回復について伺います。七月の記録的大雨に際して、佐竹知事の対応については、県の内外から厳しい批判が相次ぎ、知事は深い反省を示すと共に、今議会に自身の減給処分案を示しております。

知事は今年四月の知事選挙で三十三万五千票余りの圧倒的得票で三選を果たし、県民の支持率も七割を超えていただけに、県民の失望は大きく、また、県政に対する信頼と本県のイメージを損なう結果となったことは誠に残念であります。

知事の職務は激務であり、休日にも殆ど休みの取れない日程が続く中で、プライベートな時間を取ることの必要性も十分理解します。しかし、今回の一連の対応の背景には、県庁幹部の危機管理意識の低さに加え、知事の三選を果たしたことによる気の緩みや、県庁の仲間意識などが指摘されております。

佐竹知事には、豪雨災害からの速やかな復旧に加え、人口減少、高齢化など本県の抱える課題に県民のリーダーとして指導力を発揮していただかなければなりません。この度の豪雨災害に際しての虚偽説明などで、大きく失われた県民の信頼をどう取り戻し、県庁組織を引っ張っていくおつもりか、知事の決意をお聞かせ下さい。



知事答弁


 私自身の思慮に欠けた行動と説明により、被災された方々をはじめ、県民の皆様の県政への信頼を大きく損ねたことを深く反省し、自らに県政史上最も重い給料等の減額を科すための関係条例案を本議会に提案いたしました。

 一旦失われた信頼を取り戻すことは容易ではありませんが、まずは災害からの復旧について、国や市町村と十分に連携しながら、被害を受けた農地や公共土木施設等の早期復旧と被災された方々の生活や事業活動を支援してまいります。

 また、災害に迅速に対応していくためには、私自身と幹部職員はもとより、職員一人ひとりが常日頃から、危機対応への心の備えを怠ることなく、危機発生時には直ちに最善の対応をとるという危機管理意識を持ち続けることが重要であり、これに加えて緊急時における情報伝達のあり方や、災害対策本部の早期設置など、組織としての危機管理体制の見直しを行ったところであります。

 今後とも、このたびの反省をしっかりと心に刻みながら、ふるさと秋田を更に発展させていくという初心を忘れることなく、知事という職責の重さを改めて深く認識するとともに、自らが先頭に立ち、県民の皆様に信頼していただけるよう、県政の諸課題の解決に向けて、職員と共に全力で取り組んでまいります。



二 人口減少と第3期元気プランについて   [知事]


  1 秋田市への一極集中と県外流出について


北林たけまさ



 次に人口減少問題について伺います。

 私は平成二十一年の六月議会で初めて一般質問に立ってから、今回で十回目の登壇になりますが、そのほとんどで人口減少問題や少子化対策を取り上げてまいりました。

 最初の質問では、歯止めの掛からない出生数の減少に対して、インパクトのある少子化対策を実施する事を訴え、その後は、若年者の県外流出の抑制や女性の職場の創出など、社会動態の減少を抑制する具体的な政策を、速やかに実施する必要がある事などを求めてきたのに対し、知事からはその都度前向きな答弁をいただきました。

 また昨年六月の一般質問で県政課題に対する取組の成果と目標達成度について質問した際には、多子世帯向けの奨学金制度の新設や、若者の県内定着に向けた奨学金返還助成制度を設けた所であり、今後も人口減少問題に真正面から取り組んでいくとの答弁がありました。

 知事のこれらの問題に対する重要性の認識は今年度、あきた未来創造部を設けたことからも十分伝わってくるものの、残念ながら年間出生数や県外流出、Aターン就職者数など人口減少問題に関わる重要な指標については、なかなか改善の兆しが見えてきません。

 人口減少や少子化は歴史的な経緯や経済の動向など様々な要因が関わっており、行政だけで解決できる問題でないことはもちろん承知をしておりますが、県政の最重要課題と長年言われながら、なかなか取組の成果が見えないことに、質問する立場としてももどかしい思いが致します。

 これまでの人口減少や少子化に対する県の進めてきた方向性は理解しますが、県民意識調査においてもこの分野の県民の評価は厳しく、私も政策の中身や、克服しようとする県庁全体の意気込みについては物足りなさを感じます。

 そこで、今議会に示された「第3期ふるさと秋田元気創造プラン」の人口減少対策について伺います。

 今年ついに百万人を割り込んだ県人口ですが、その減少速度は地域によって様々です。

 先月、県の調査統計課が発行した「平成二十八年秋田県の人口」を見ると、県内市町村間での人口の移動が表に示されておりますが、そこを見ると秋田市は他のほとんどの市町村に対して転入が転出を上回っており、その合計は九五八人に及びます。県人口が減少する中で、県内での移動は、秋田市への一極集中が続いており、その結果多くの市町村で、県平均を上回る急激な人口減少に直面しております。

 一方、秋田市の県外との社会動態を見ると、転出が転入を一、六二四人上回り、県内からの転入超過分約千人を合わせても、社会動態は六百人程のマイナスとなっております。県内の市町村からは秋田市へと集まり、秋田市からは県外へと人が出ていっており、秋田市が本県から大都市圏への人口流出を食い止める、いわゆる「ダム機能」を果たしていないことが分かります。

 ちなみに、東北各県の県庁所在地の社会増減数を見ると仙台市や盛岡市、山形市などは転入超過となっており、大きく転出超過となっているのは青森市と秋田市です。

 知事は秋田市との連携事業を進めていますが、秋田市への一極集中と県外流出をどのようにお考えでしょうか。



知事答弁


 秋田市の人口の社会動態は、県内市町村からの流入などにより、転入超過が続いておりましたが、平成十四年以降は転出超過傾向となってきております。

 その主な要因としては、県内市町村からの流入が減少する一方、高校や大学を卒業し、首都圏等で進学・就職する若者が、あまり減少していないことと、こうした若者を呼び戻せていないことにあります。

 我が国全体が人口減少局面に入り、大都市を除く県庁所在地の多くは、秋田市同様、転出超過となってきておりますが、本県の人口流出を抑制するためには、人口の受け皿としての機能を有する中核都市の存在が不可欠であります。

 そのため、県の経済・行政の中心であり、大学等の教育機関も集積している秋田市において、雇用の量と質を更に高めるとともに、都市機能の向上など若者にとって魅力あるまちづくりを進めることが重要であると考えております。

 豊かな自然に囲まれ、多くの歴史的資産を有し、文化施設・スポーツ施設等が充実している秋田市は、本県の目指す「高質な田舎」の要素を持ち合わせていることから、市の魅力を高めるまちづくりの姿勢や方向性を尊重しながら、県としましでも、その取組について連携・支援を行ってまいります。




  2 第3期プランにおける人口減少対策について


北林たけまさ


 また、第3期元気プランの骨子案を見ると、これまでの第2期プランとは違い、「人口減少の抑制と地域を守るシステムの構築」が元気Aに記載されており、この問題がより重要視されているように見えます。

 第3期プランにおいて人口減少対策に関して変わった点や新たに加えた対策などがありましたらお聞かせください。



知事答弁


 第3期プランでは、地方創生を実現するために策定した「あきた未来総合戦略」に基づく政策の流れを踏まえつつ、重点戦略のトップに「ふるさと定着回帰戦略」を掲げ、人口減少の克服を目指すことにしております。

 この戦略では、人口の転出超過や出生数の減少に歯止めをかける「攻め」と、県民が安全・安心に暮らすことができる環境を維持する「守り」の両面から、施策を展開することにしております。

 具体的には、「攻め」の施策として、成長産業における雇用の創出に加え、ICTや建設業など産業界のニーズに即応した、個別具体的な人材確保に集中的に取り組むことなどにより、若者の県内定着を図ってまいります。

 また、産業振興により創出された雇用の場をベースとしながら、秋田への人の流れをつくるため、移住希望者や地方での暮らしに興味がある「移住潜在層」を含め、移住に向けた一層の働きかけや、相談体制の強化を図ってまいります。

 さらに、子育て支援については、未来への人材投資という観点から、保育料助成など経済的な支援の一層の充実や、在宅での子育ても含め、一時預かりなどのサービス利用に対する新たな支援についても鋭意検討しているところであります。

 一方、「守り」の施策については、これまでの「お互いさまスーパー」に、交流・見守り機能などを付加した「秋田版小さな拠点〕として整備することにより、その普及拡大を図るほか、まちづくりに取り組む人材の育成・発掘や、民間と連携した空き店舗等のリノベ-ションを進めるなど、県民がそれぞれの地域で、活力と豊かさを実感できるよう努めてまいります。



三 移住定住の促進について         [知事]


  1 就業支援について


北林たけまさ


 関連して移住定住対策について伺います。

 人口の自然減少に加え、社会動態の減少が続く本県において、移住定住の促進は極めて有効であり、県は今年度新たに設置した、あきた未来創造部に移住・定住促進課を設け、取組を強化しようとしております。

 平成二十八年度の本県への移住者数は、二九三名と前年に比べて二倍以上の大幅な増加を記録しており、県の事業評価もAとなっています。 しかしながら移住についての明確な定義や統計データは無いため、移住者数のカウントは秋田移住定住総合支援センターに登録した人の中で、県内に転入した人を対象としております。

 国が進める地方創生で移住促進が重要施策に位置付けられ、移住は全国的にブームとなり、昨年度は大幅に数を増やしておりますが、転入者全体に占める割合は僅かであり、今後どれだけ移住者を増やしていけるかは、これからの取り組み如何にかかっていると思います。

 そこで、総務企画委員会では、先月県内調査の際に、鹿角地域振興局を訪れ、移住にいち早く取り組んでいる鹿角市のお話を伺いました。鹿角市では市役所に「鹿角ライフ促進班」という担当部門を設け、市職員に加えて、地域おこし協力隊制度を活用した「移住コンシェルジュ」が移住に関する相談や情報発信、体験プログラム、宅地建物データバンクなどの移住促進業務を行っているとの事でした。

 移住者自らが案内人となる事で、移住者目線での対応が出来ており、また移住者ネットワークを立ち上げることで、移住後のフォローアップにも取り組んでいます。コンシェルジュは現在、二○代から三○代の六名が在籍し、業務にあたる一方、自らの定住化に向けて準備をしているとの事でした。

 移住コンシェルジュの方々にお話を伺うと、鹿角での暮らしについては概ね満足しており、特に心配や困っている事は少ないようでしたが、仕事や収入面については不安を持つ方も多いようです。

 特に、移住後の就職先で希望の最も多かった農業については、農地の取得、経営資金の調達、技術の習得など移住者にとってはどれもハードルが高く、希望しても実現するのは容易ではないようです。 技術を習得し準備ができるまで農業法人など一定期間働く場所があれば良いが、との話もありました。

 移住者に最も必要なのは、職、住居、居場所の三つと言われますが、住居と居場所については鹿角市のように市町村で十分対応が可能と思います。しかし職については、市町村単位での対応には限界があり、県として支援策を講ずる必要があるのではないでしょうか。

 島根県益田市にある「持続可能な地域社会総合研究所」の調査によると、過疎指定の全国七九七市町村の中で、二○一○年から二○一五年の間に、転入者が転出者を上回る社会増を実現した市町村は約一二パーセントに上り、小規模な市町村で人口回復の動きが表れているとの事です。

 同研究所の藤山浩所長は「消滅可能性市町村リストの発表時点に比べ、この五年間で大きく風が変わってきている。心豊かに自然を見詰めながらそこにしかない暮らしをしている農村に、若者が入っている」と話しています。

 そうした流れを本県にも呼び込むためには、農林漁業を中心として、本県の自然や風土を活かした職業への就業支援を、農林水産部や産業労働部などが連携して行う必要があると考えますがいかがでしょうか。



知事答弁


 県の移住相談窓口においては、仕事に関する相談が最も多く、移住・定住を促進するためには、仕事の確保が重要であります。

 このため、ご指摘の一次産業への就業については、就業前の不安解消に向け、県内で作業体験する短期・中期研修や、園芸メガ団地に取り組む先進法人等で実践的な技術を学ぶ長期研修を実施するなど、様々な支援を行っているところであります。

 特に、移住による就農希望者については、県や市町村、JA等からなるサポートチ-ムを組織し、農地の取得や資金調達の相談、営農開始に必要な機械・施設の無償貸与のほか、就農後の技術指導、経営が軌道に乗るまでのフォローアップなど、移住者に寄り添いながら、営農ステージに応じたきめ細かな支援を講じてきており、昨年度は八名の方が自営、あるいは農業法人に雇用される形で、新たに就農しております。

 さらに、県では、移住相談会等において、就農や事業承継等、幅広い就業情報の提供を行っているほか、地域資源を活用した起業を支援するなど、関係部局等と連携して就業を支援しております。

 県としましては、引き続き、関係団体からも広く協力を得ながら、移住者の就業ニーズに即したサポートを行ってまいります。




  2 移住定住促進に係る方針と対策について


北林たけまさ


 また、移住者と本県の関係を見ると、親族が本県出身であるなど、何らかのつながりのある割合は八割程にも達しており、Aターンのひとつとして幅広く移住をとらえる視点も大切と考えます。

 いずれにしても、人口の社会動態のマイナスが続く本県にとって、移住・定住促進は極めて重要であり、統計に表れる移住者数に限らず、幅広く県内への転入者を増やしていく姿勢が必要と思います。

 知事はどのような方針と対策で本県への移住定住を促進していくおつもりかご所見を伺います。



知事答弁


 移住・定住の促進については、これまでの積極的な各種施策の展開により、本県ゆかりの方々を中心に、移住者は着実に増加しておりますが、一方で、移住希望者に対する全国自治体からの活発な働きかけが続いている状況であり、多様な移住の動機・きっかけを踏まえた、より効果的な働きかけや、新たな対象の掘り起こしが必要となっております。

 このため、移住は意識していないものの地方に興味がある、いわゆる「移住潜在層」を加えた幅広い対象者に向け、観光や食文化等の多様な要素を背景とした「秋田暮らし」の魅力を伝えるとともに、市町村とも連携し、釣りやスポーツといった、趣味や嗜好に合わせた様々な情報を提供するほか、先輩移住者の経験を踏まえた生の声を届けるなど、移住情報の発信を強化してまいります。

 また、移住希望者の多様なニーズの把握や個々のニーズに即した相談対応を、より丁寧に行うため、組織体制の強化も含めた相談窓口の充実を図るとともに、民間事業者と連携した住環境の確保支援に取り組むなど、市町村や関係団体等と協力して「あきたに住みたい、暮らしたい」を支援する体制を強化してまいります。

四 奥羽・羽越新幹線整備構想について    [知事]


北林たけまさ


 次に奥羽・羽越新幹線整備構想について伺います。

 平成二十七年三月に北陸新幹線、長野~金沢間が開通し、また昨年三月には北海道新幹線、新青森~新函館北斗間が開通しました。

 北陸新幹線の利用者数は、以前特急に乗っていた利用者の三倍に達し、金沢はじめ沿線都市では観光客や民間投資の増加など様々な新幹線効果が表れております。

 また、北海道新幹線の函館までの延伸効果は当初、北陸新幹線や九州新幹線と比べるとかなり控えめなものになるとされていましたが、函館や青森、また仙台など新幹線沿線の都市間に新たな人の流れが生まれており、首都圏との時間短縮効果以外にも、新幹線が地方の広域的な発展にも効果をもたらすことが期待されています。

 北海道新幹線は平成四十二年度に札幌まで延伸することが予定され、これで昭和四十七年に基本計画に位置付けされた新幹線の路線はほぼ完成に目処が立った事から、昭和四十八年に基本計画に位置づけされながら、これまで全く進展が見られなかった奥羽・羽越新幹線を含む全国一一の路線が整備に向けて誘致の動きを活発化させています。

 全国の新幹線鉄道図にある約七千キロのうち開通しているのは二、七六五キロ、工事中と整備が確定している路線が一、○一九キロ、これに対して先に述べた見通しの立たない十一路線は合計約三、○○○キロに及んでおり、新幹線の整備率はまだ五割にも達しておりません。

 今年五月に開催された奥羽・羽越新幹線整備促進期成同盟会総会の記念シンポジウムで講演した藤井聡氏は、自身の著書『「スーパー新幹線」が日本を救う』の中で、新幹線のもたらす効果をディープインパクトと称し、「新幹線の有無がその都市の命運を分ける」「新幹線こそ地方創生の切り札」などと述べております。

 本県では平成九年に、在来線を使ったミニ新幹線方式で盛岡から秋田市への乗り入れを実現したものの、その後フル規格の新幹線が続々と整備されてくるにつれ、県都秋田市と東京との時間的距離は相対的に遠くなっており、新幹線の整備を今後どのように進めるかは、秋田の将来を左右するほどの大きな問題であると思います。

 そうした中、県は今年度の当初予算に奥羽・羽越新幹線の整備を図るための期成同盟会設置費用など一七八万円を計上し、知事選後の六月補正予算には調査研究費用など約一、○○○万円を計上しました。

 県内における新幹線の整備については、これまで県議会においても県南部を中心として秋田新幹線や山形新幹線の延伸が要望されることはありましたが、県から前向きな答弁や積極的な動きは無かったと記憶しております。今回予算措置されたことで、将来に向けて一歩動き出したものの、気運が盛り上がるまでには至らず、議会でもあまり議論になっていないのが実情です。

 奥羽・羽越新幹線の整備に向けた運動は山形県が先行しており、本県はその動きに同調しておりますが、山形県内においても「仙台からフル規格の新幹線を通した方が良い」など様々な声があるようですし、酒田市長は山形新幹線の庄内延伸を公約に掲げて当選したとのことです。

 昭和四十八年に決定された新幹線の基本計画をそのまま推し進めるしか方法はないのか、また現実的に可能なのか、幅広く議論を進めていかなければならないと思います。

 東北新幹線の盛岡~大宮間が開業して三五年、秋田新幹線が開業して二○年を迎えました。昨年は東北新幹線が北海道とつながり、平成四十二年度には札幌まで完成することが決まりました。基本計画の作られた昭和四十八年当時とは状況が大きく変わっており、今後は整備された縦軸を活かして、東北隣県や日本海側のネットワークをいかに効率的に構築するかが重要になるものと考えます。

 また、秋田新幹線の存在を抜きにして奥羽新幹線の議論を進めることは本県にとっては難しい事のように思います。

 秋田~盛岡間は法的には在来線であり、新幹線の基本計画にはありませんが、盛岡、仙台を通って首都圏に至るルートは人口の最も多い所を通っており、採算性の面から考えても、このルートを外すことは現実的ではありません。

 先月には山形県など沿線六県で構成する合同プロジェクトチームも立ち上がり、整備費や経済効果の試算などをまとめるとの事ですが、その中で秋田新幹線の位置づけはどのようになるのでしょうか。

 いずれにしても奥羽・羽越新幹線については、様々な考え方があります。基本計画ありきではなく、現在の状況を客観的にとらえ、日本海側の新幹線整備について幅広く検討し、議論を進める必要があるのではないでしょうか。

 今回の予算は、国の整備計画への検討土台に乗せるための予算とお聞きしましたが、調査研究の目的は、あくまでも当初の計画を進めるためのものなのか、また調査結果はいつ頃までにまとまりどのような形で公表されるのでしょうか。知事のお考えをお聞かせください。



知事答弁


 日本海側や東北内陸部を縦軸で結ぶ奥羽・羽越新幹線は、国全体の活力向上を目指した地方創生回廊の実現や、リダンダンシーの確保による災害に強い多軸型国土の形成はもとより、県内の主要都市間の移動や隣県との交流の拡大にも資することから、昨年九月に、県、市町村及び経済団体との協働により、整備を促進するための期成同盟会を設立いたしました。

 両新幹線については、現在の基本計画では、起点や終点、主な経過地が定められているのみであり、その実現に向けては、秋田新幹線の役割も踏まえながら、将来の秋田を見据えた長期的かつ現実的な視点に立った柔軟な議論が可能であると考えております。

 このため、今年二月には、新幹線を活用した沿線地域全体としての将来ビジョンの共有や、それぞれの地域の実情に沿った整備手法、いわゆる「東北方式」について、私から沿線県の知事等に提案し、先月には、こうした方向性のもと、沿線県によるプロジェクトチームを立ち上げたところであります。

 このチームでは、国の幹線鉄道ネットワーク等のあり方に関する調査も踏まえながら、平成三十一年度までの三か年を目途(めど)に調査・検討を行い、沿線各県との合意のもと、結果を公表することになりますが、その中で、具体的なコスト縮減に結びつく整備手法についても研究してまいりたいを考えております。

 奥羽・羽越新幹線の整備には三〇年以上の長い年月を要するものであり、このような取組と併せて、リーフレットの配布や若者等との意見交換会の開催などにより、県全体の一層の機運醸成に努めながら、まずは、速やかに整備計画路線の指定に向けた国の調査指示の対象となるよう、全力を尽くしてまいります。



五 秋田新幹線の高速化について       [知事]


北林たけまさ


 また関連して秋田新幹線の高速化についてお尋ねします。

 先ほど述べたように東京から秋田市までの新幹線における時間的距離は他の都市と比べて相対的に遠くなっており、青森より二○分程も遠くなっております。

 その原因は言うまでもなく、秋田~盛岡間の在来線利用区間の運行速度が遅いためであり、秋田~東京間の二○パーセントの距離に四三パーセントの時間を要している計算です。また秋田~盛岡間は災害にも弱く、七月の豪雨においても一週間ほど不通となったのは記憶に新しい所です。

 奥羽新幹線が仮に実現するとしても、それは数十年も先のことであり、本県にとっては秋田新幹線の盛岡までの高速化と安全性の確保が何より重要な課題ではないでしょうか。素人考えですが、大曲駅でのスイッチバック解消や一部複線化などによっても時間短縮は相当に図れるのではないでしょうか。

 秋田新幹線が平成九年に開業以来、県はこうした課題にどのように取り組み、JR東日本とはどのような話し合いを進めてきたのか、また今後どのように取り組まれるおつもりか知事のご所見を伺います。



知事答弁


 秋田新幹線は、本県と首都圏、仙台市等を結ぶ大動脈として、重要な交通インフラでありますが、秋田・盛岡間においては、最高速度が一三〇キロメートルに制限されているほか、カーブの多い線形、行き違い設備の不十分さなどから、フル規格の区間に比べ所要時間が長くなっております。

 一方で、国による支援制度がない中においては、高速化を図る上で不可欠な線形改良や高架・複線化などの抜本的な整備を行うことは、かなりハードルが高いのではないかと考えております。

 このため、県では、これまで踏切の現況調査を実施し、道路管理者による踏切改良等を促進してきたほか、JR東日本に対しては、ダイヤ改正要望協議など様々な機会をとらえて、速達性の高い新幹線との連結や車両の高性能化、安全・安定運行への対応を要請するとともに、全国鉄道整備促進協議会などの場を通じ、秋田新幹線を含めた在来線の高速化について、国等に対し要望しているところであります。

 こうした中、平成二十六年三月には、山形新幹線の車両よりも高速性に優れたE6系車両の導入により、開業時に比べ、秋田・東京間の所要時間は最速タイプで一二分の短縮が図られております。

 今後とも、秋田新幹線は、本県にとって必要不可欠な路線であることから、現在JR東日本で開発を進めている次世代車両の秋田新幹線への導入や、秋田・盛岡間の高速化、安全性や快適性の向上について、引き続き粘り強く要望していくほか、将来的には、奥羽新幹線と秋田新幹線の一部区間での軌道の共用など、様々な可能性を探ってまいります。



六 クマ対策について            [知事]


北林たけまさ


 次にクマ対策について伺います。

 県内では昨年、四人の死亡者を含む一九人がツキノワグマによる人身被害を受け、今年に入ってからもすでに九月十一日時点で、一名の死亡を含む一二人が被害を受けております。

 中でも七月十四日に、北秋田市の伊勢堂岱遺跡で市の男性職員がクマよけの作業中にクマに襲われた事故は、現場が日沿道の鷹巣西道路の工事現場からほど近い事もあり、地元でも大きなニュースとなりました。

 クマの出没地域は県内のほぼ全域に及んでおり、農作物の被害や目撃情報も連日新聞に掲載されています。近年クマの生態は変化しており、生息域が奥山から人里へと拡大し、人を恐れないクマが増えているようです。 学校や公園、博物館などでもクマの出没情報は相次いでおり、市街地でもクマに対する注意が必要になるなど異常な事態に陥っています。

 その要因としては、奥山までスギなどの人工林が広がりクマの食料となる広葉樹林が減少した事や、人口減少などで里山での手入れが行き届かず、人とクマとの間に緩衝地帯が無くなったことなどが言われております。

 里に下りてくれば食料が豊富にあり、人も怖くないことを学習したクマは今後も増えてくることが予想され、クマの問題は、身体の安全はもちろんのこと、観光など多方面に重大な影響をもたらすことが懸念されます。

 最近は県内至る所に「クマ出没注意」の看板が掲げられていますが、効果のある対応とは思えず、身の安全確保を第一とした対策を市町村、警察等と連携して取る必要があるのではないでしょうか。

 また、捕獲頭数を見ると、昨年度はここ数年で最大の四七六頭でありましたが、今年はそれ以上のペースで捕獲が続いており、先ほど述べた生態の変化を裏付けています。

 クマの生息域を奥山に戻すために、人工スギの広葉樹への転換や、里山の整備など、長期的な視点に立った根本的な環境整備にも取り組むべきではないでしょうか。

 県の組織体制についても、現在、生活環境部が対応していますが、人の安全対策や森林の整備などの面からは十分な対応が難しく、部局横断的な組織を立ち上げて対応に当たる必要があると考えますが知事のご所見を伺います。



知事答弁


 県では、昨年八月に、市町村、警察等とともに「ツキノワグマ被害防止連絡会議」を設置し、クマの被害防止に関する総合的な取組を進めているほか、人身被害が発生した場合には、地元関係機関による緊急対策会議を開催し、パトロールの強化や立ち入りの制限、有害鳥獣捕獲の実施などの措置を講じてきたところであります。

 しかしながら、クマの出没が依然として多いことから、専門家の意見を聞きながら、新たにクマの生息域と県民の生活圏をゾ-ンで区分し、ゾーン毎に地域で被害防止対策に取り組む仕組みの導入や、市町村への捕獲許可の権限移譲を進めるなど、県民の安全対策を強化することにしております。

 また、クマの生息域を奥山に戻すため、森づくり税事業等を活用し、奥山の放牧跡地等での広葉樹の植栽などによる、生態系に配慮した整備を引き続き進めるとともに、里山では、市町村や森林ボランティア団体等による集落周辺での薮払いなど、クマの出没抑制につながる取組を支援してまいります。

 県の組織体制については、今年度新たに、「ツキノワグマ被害防止対策庁内会議」を設置し、都市公園や野外学習施設、学校等の公共施設周辺等における緩衝帯や電気柵の設置について、具体的に検討を行っているところであります。

 クマ対策は、様々な分野にわたっており、一体となった対応が必要であることから、庁内はもとより、関係機関との連携を一層強化しながら、県民の安全・安心の確保に向け、迅速かつ的確に対策を講じてまいります。



七 親元に住民票を残す学生の選挙権について [選挙管理委員長]


北林たけまさ


 次に学生の選挙権について選挙管理委員長に伺います。

 昨年六月に公職選挙法が改正され、選挙権年齢が満一八才に引き下げられてから一年以上が経過し、幾つかの選挙が実施されました。

 今年四月九日投開票の秋田県知事選挙を見ると、一八才、一九才の投票率は三八・三パーセントと、県全体の投票率五六・八三パーセントを大きく下回りました。中でも一九才の投票率は三一・四九パーセントで、一八才を一三・三七ポイントも下回っております。また、昨年夏の参議院選挙においても同様の傾向が見られました。

 県内各高校では主権者教育にも取り組んでおり、一八才の投票率が四五パーセント程度に達しているのを見ると、若者の政治に関する関心は決して低くないと感じますが、一九才になると途端に投票率が下がってしまうのは残念なことです。

 県内の高校を卒業する生徒のおよそ六割は進学や就職で県外に出るため、こうした結果は止むを得ない面もありますが、中には投票したくてもできない例もあります。それは進学して住所が変わっても、親元から住民票を移していない場合です。

 首都圏のある大学では、選挙年齢が一八才になったことを契機として、一人暮らしの学生に対して不在者投票を呼び掛けたところ、親元の選挙管理委員会から選挙人名簿への登録を拒否されるなどの理由で、投票できない学生が多数存在することを知り、思わぬ事態に当惑しているようです。

 住民票を親元に残したまま一人暮らしをしている学生に対する選挙の制限は、選挙の居住要件に基づいております。

 居住実態を優先する根拠になっているのは、昭和二十九年の最高裁判決による「法令における住所とは各人の生活における本拠をさす」ことだと思われますが、「生活の本拠」についての解釈は一つでなく、職業や生計、親族の存否など総合して判断するのが相当との見方もあります。

 例えば、単身赴任をしている場合には住民票を元の住所に残しておくのが一般的と思われますが、学生の場合にも親元に自分の部屋や荷物があり卒業後に戻る予定の場合には、生活の本拠は親元にあるとの解釈も成り立つのではないでしょうか。

 総務省が、昨年全国の選挙管理員会に対して行った「主権者教育等に関する調査」によると、親と一緒に住んでいない人のうち、住民票を移しているのは一八才で、二六・三パーセント、十九才で二九・六パーセントに過ぎません。また住民票を移していない理由は、いずれ実家に戻るつもりだからが、二九パーセントで最も多くなっています。

 本県において、一部の市町村では、学生に対し、住民票のある住所への居住を選挙実施前に確認し、居住していない場合には選挙人名簿から抹消する措置をとっているようですが、県選挙管理委員会では実態をどのように把握しておられるでしょうか。

 先の総務省の調査によると、住民票を移していない人の二九・九パーセントが実際に投票しています。

 市町村によって、投票出来たり出来なかったりしているとすれば、大きな問題ではないでしょうか。

 更に、取り扱いそのものにも本質的な疑問があります。公職選挙法では、一八才以上の国民に国政選挙の選挙権が与えられていますが、これには、居住要件は含まれていません。ところが選挙人名簿は国政選挙でも地方選挙でも同一で、居住要件を理由に選挙人名簿から抹消された学生は国政の選挙においても投票できなくなってしまいます。また地方選挙でも、住民票を親元に残したまま県内の他の市町村に居住している場合に、知事選挙でも投票できないことになります。

 選挙人名簿の登録のための調査等については、公職選挙法施行令に定められており、県選挙管理委員がこれを遵守するよう市町村に対して指導することは、当然のことと理解しますが、居住の実態は様々なケースがあり、

 学生についてのみ居住実態を調査し、選挙人名簿から抹消しているとすれば、選挙制度の本質からも疑問に思いますし、本県出身学生のふるさと離れにもつながりかねないものだと思います。

 選挙の制度は、法律や判例によって定められておりこの場で質問することはそぐわないかもしれませんが、選挙権は国民に与えられた権利であり、まして将来を担う若者の選挙権については慎重に判断されるべきものと思います。

 親元に住民票を残す学生の選挙権の取り扱いについて問題点は無いのか、県選挙管理委長のお考えがありましたらお聞かせください。



選挙管理委員長答弁


 親元の住所に住民票を残す学生の選挙権に関するご質問でありますが、住所とは各人の生活の本拠を指すとされ、住民基本台帳法をはじめ、関係法令における取扱いは基本的に同様のものとなっており、選挙人名簿についても市町村選挙管理委員会において住民基本台帳に基づき作成されております。

 しかしながら、公職選挙法においては、住民基本台帳に記録されている者であっても当該市町村に生活の本拠がないと認められる場合には、名簿に登録してはならないとされているところであります。

 県選挙管理委員会としましては、選挙人名簿への登録状況について個別に調査は行っておりませんが、これまでも市町村選挙管理委員会に対し、関係法令や行政実例などに従って、選挙人名簿の適切な調製に努めるよう注意を喚起してきたところであります。

 もとより、選挙人名簿の調製をはじめとした選挙事務は選挙制度に対する信頼を確保する上で重要でありますので、今後とも様々な機会をとらえ、市町村選挙管理委員会に対して助言してまいります。



北林たけまさ

以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。


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